タイ議会で進められていた、カジノを核にした複合リゾート開発を合法化する「Entertainment Complex Bill」(統合型リゾート法案)は、野党と有力与党の分裂、さらには国境紛争の影響で急速に優先度が低下し、「下座議題」に格下げされた可能性が高い。上院では、親政権与党「タイ誇り党」(ブームジャイタイ党/Bhumjaithai)が当初の支持を翻し、憲法違反の恐れや経済効果への疑問を理由に同法案撤回を政府に求めていると報じられている。

複数の報道によると、下院で7月9日に予定されているエンターテイメント法案の初審議は延期される見込みだ。こうした法案の後退と並行して、タイの国立開発行政研究院(NIDA)が29日に発表した最新の世論調査によると、ペートンターン・シナワット(Paetongtarn Shinawatra)首相(※)の支持率は過去最低の9%に急落。カンボジア国境紛争への対応と、カンボジア兵死亡をめぐるタイ軍批判発言によって国民の不満が爆発。バンコク中心部では28日、退陣を要求する大規模なデモが発生した。※シナワット首相は元首相のタクシン・シナワットの次女で、2024年8月に首相に就任した。
政治危機は連鎖反応を引き起こし、政府与党の連立は崩壊状態に突入する可能性がある。エンターテイメント法案が棚上げとなれば、政府が目指していた本年中の成立可能性は極めて不透明となる。
一方で、地元紙バンコクポストは30日の記事で、タイ貢献党のダヌポン・プンナカンタ(Danuporn Punnakanta)報道官の「審議の延期は政界の不和とは関係ない」 「観光インフラの改善のため法案を前進させる」というコメントを報じている。