ギャンブル等依存症対策基本法の一部を改正する法律が、2025年6月18日の参議院本会議で可決・成立し、同6月25日に公布された。今回の改正の主眼は、深刻化するオンラインカジノ問題に対応するため、日本国内からのアクセスにつながる広告や誘導行為を禁止することにある。

改正法は、具体的に以下の行為を禁じている。

  • 国内にいる者に対して、違法なオンラインギャンブルのウェブサイトやアプリを提示すること。
  • インターネットを利用し、国内にいる者をオンラインギャンブルに誘導する情報を発信すること。

アフィリエイトサイトやSNSなどで「日本で遊べるおすすめオンラインカジノ」などと宣伝し、海外の賭博サイトへリンクを貼って誘導する行為が、これに該当する。

そもそも日本では、公営競技など法律で許可されたもの以外への金銭を賭ける行為は、刑法第185条の賭博罪によって禁じられている。海外で合法的に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内から接続して賭ける行為は賭博罪に該当する可能性があると警察庁や消費者庁が注意喚起しており、検挙事例も出ている。
しかし、海外で運営している合法的なオンラインカジノ事業者を日本の法律で直接取り締まることが困難であるため、日本に居住するプレーヤーを賭博サイトへ仲介する国内の広告・誘導行為を規制することで、問題の入り口を断つ狙いだ。

この法改正以前から警察庁は、オンラインカジノ対策として別の角度からの取締りも強化している。その一つが、賭け金の送金を仲介する「決済代行業者」の摘発だ。実際に2023年9月には、決済代行業者の関係者が常習賭博ほう助の疑いで逮捕されており、こうした捜査が利用者の特定につながるケースも出ている。

今回の法改正は、こうした既存の取締りに加え、広告というさらに手前の段階での対策を講じることで、違法なオンラインギャンブルへの参加を抑制し、結果としてギャンブル等依存症問題の未然防止を図ることを目的としている。

海外メディアの反応

「ギャンブル等依存症対策基本法」の一部改正について、海外メディアの関心は、依存症対策全般というよりも、「日本国内における、海外を拠点とするオンラインカジノへの、より厳しい規制」という共通認識を持っている。
報道の論調は、日本がこれまで野放しに近かった、巨大なグレーマーケットに対して、ついに法的な包囲網を敷き始めた、という事実を伝える、客観的なものが大半。

以下に、海外メディアが報じた主なポイントを3つに分けて要約する。

ポイント1:主眼は「オンラインカジノの非合法化」の徹底

海外メディアが最も大きく報じているのは、今回の法改正が、急増するオンラインカジノの利用に歯止めをかけることを主目的としている点です。

「日本の国会は、海外のオンラインカジノへのユーザー誘導を目的とした広告やプロモーションコンテンツを明確に禁止する法改正案を可決した。これは、日本がオフショア・ギャンブルの取り締まりを強化する動きである。」
出典:The Japan Times, June 18, 2025

多くの報道が、たとえ海外で合法的にライセンスを取得しているオンラインカジノであっても、日本国内からアクセスして賭ける行為は、日本の刑法における犯罪であるという日本政府の立場を、今回の法改正が改めて明確にした、と伝えている。

ポイント2:広告・プロモーションの全面禁止

次に注目されているのが、オンラインカジノへの誘導に繋がる、あらゆる広告・宣伝活動を違法とした点です。これは、アフィリエイト事業者やインフルエンサーに大きな影響を与えるものとして、特に業界専門メディアが詳報している。

「改正法は、オンラインカジノのプラットフォーム運営や、アプリストアでの配信を禁止するだけでなく、アフィリエイトリンク、インフルエンサーによる推奨、『おすすめオンラインカジノTOP10』といったランキングサイトの運営など、幅広いプロモーション活動を違法とするものである。」
出典:Yogonet International, June 18, 2025

改正法自体に直接的な刑事罰の規定はないものの、これらの行為が明確に「違法」と規定されたことで、インターネットサービスプロバイダやSNSプラットフォームが、違反コンテンツをより積極的に削除するための、強力な法的根拠を得た、と分析されている。

ポイント3:「法的グレーゾーン」という誤解の払拭

なぜ日本政府がこのタイミングで法改正に踏み切ったのか、その背景として、日本国内に蔓延する「海外のオンラインカジノは、法的なグレーゾーンである」という誤った認識を払拭する必要があった、と多くのメディアが指摘している。

「当局は、誤解を招く広告や、著名人を起用した宣伝、そして『法的なグレーゾーン』という虚偽の主張が、違法性の認識を欠いたままの利用を助長してきたと見ている。ある調査では、オンラインカジノ利用者のうち、その違法性を認識していたのはわずか40%であった。」
出典:NEXT.io, June 18, 2025

海外メディアの視点を総括すると、今回の法改正は、日本のIR(統合型リゾート)計画や国内のパチンコ産業の規制とは直接関連するものではなく、あくまで「国境を越えて流入してくる、違法なオンラインギャンブルサービスから、自国民と税収を守るための、国境管理(ボーダーコントロール)の一環」として捉えられている。