パチンコホール事業者、遊技機製造業者、販売業者、周辺設備メーカーなどが参加する、パチンコ業界唯一の横断的な事業者団体である一般社団法人日本遊技関連事業協会(略称:日遊協)は、近年、業界の喫緊の課題のひとつに遊技の「キャッシュレス化」を挙げてきたが、1月14日に開催された同協会の臨時社員総会の冒頭で西村拓郎会長(日拓グループ代表取締役社長)は改めてこの必要性を説いた。
西村会長はこれまでキャッシュレス化について、「この業界がガラパゴス化して現金しか扱えないという状況」など、消費者の支払い手段の流れに対応していないことへの危機意識を背景に、「待ったなしで対応せざるを得ない」としていた。しかし今年最初の公の場でのスピーチでは、「依存対策のためのデジタル活用をしっかりと、業界の皆が同じ方向を向いて進めていくことが大事」「お客様のインとアウトがきっちり把握できるキャッシュレスを推進することによって」とギャンブル等依存症対策の文脈の中でキャッシュレス化の必要性を説いた。しかも、設備投資負担を懸念する声に対して、「コストをかけるということは未来への投資。未来への投資ができない業種、業態、企業は必ず衰退している」と、これまでにない強い言葉を用いて理解を求めた。
西村会長は日遊協広報誌の新年号に寄せた年頭所感においても、同様の見解を述べている。
「パチンコホールのデジタル化の推進によってお客様に、より安心して遊んでいただける遊技環境を提供できればと考えております。例えばキャッシュレス化を絡めたシステム導入でお客様の使用金額が把握できれば、依存につながる遊び方をしているお客様への早期対応が可能となります。こうしたデジタル技術の活用による依存問題対策の構築に向け検討を重ねてまいります」(年頭所感より抜粋)
パチンコ業界における、”依存対策のためのキャッシュレス化を絡めたシステム” は公式にはまだ具体的な青写真は公表されていないが、少なくとも、自己申告・家族申告プログラム(排除プログラム)登録者に対して、安心パチンコ・パチスロアドバイザー(Responsible Gaming Advisor)がおこなっている遊技情報の把握や声掛けといった現状のアナログな作業をデジタル技術でサポートするものだろう。すなわち、自己管理を希望する層への安心の提供だ。
だが、”依存につながる遊び方をしているお客様への早期対応”という言葉に着目するなら、この実現のために「未自覚層(自己申告プログラム未登録者)も含めた、本人情報と紐づいた状態での、現金遊技とキャッシュレス遊技を合わせた、ペイ・イン額とペイ・アウト額の補足」、すなわち「会員カード挿入の必須化」を迫られる未来もあり得る。
会員カードの挿入の必須化は、パチンコという遊びが有する「匿名性」を失うことを意味する。だが、すでに先例はある。売り上げの8割以上がオンライン経由である公営競技では、オンライン投票においては「誰が、いつ、どのレースに、いくら投じたか」という個人の購入情報は、システム上すべて記録・蓄積されている。

海外のカジノ産業に目を向ければ、ランドベースにおいてもキャッシュレス化の動きがある。オーストラリアでは複数の州で、カジノや飲食店、ホテルに設置されているギャンブルマシンの「現金プレイ禁止」が議論されている。タスマニア州では、政府発行のプレイヤーカード(本人確認済み、使用金額の上限あり)の使用を義務付ける計画を推進中。ニューサウスウェールズ州では2024年に、依存対策とマネーロンダリング対策として、スマホアプリを用いたキャッシュレスプレイの実験がおこなわれた。
メキシコの首都、メキシコシティのランドベースカジノはすでに「現金プレイ禁止」となっている。カジノのキャッシャーで、プレイヤーカード(本人確認済み)にチャージしてからプレイする。プレイ履歴もトラッキングしているので、プレイ中の賭け方の変化も補足している。
[追記 2026-01-23]
業界メディアによると、1月22日に開催された全日本遊技事業協同組合連合会の記者会見で、阿部理事長は記者からの質問に答え「キャッシュレスに反対ではないが、クレジットカードに関しては、借金をしてまで遊技をさせないというのが基本スタンス」と明言した。
text by Tanaka Tsuyoshi