大阪に2030年に開業予定の統合型リゾート内のカジノ施設は、日本人および日本在住の外国人に対して6000円の入場料を課す。シンガポールでもIR内のカジノは、2010年の開業当初から自国民および永住権保有者に対して入場料を課している。スリランカも同様だが、今年、その入場料を2倍の100USドルに引き上げた。
同国の最大都市コロンボにおける100USドルの価値は、文系大卒事務系会社員の初任給(月)の40%~60%に相当する。日本に置き換えると、9万円~13万円に相当する。これは、「一般人は入場するな」というスリランカ政府のメッセージだ。
もうひとつの大きな目的は、国家財政の再建と規制産業からの歳入確保を強化するため。2026年1月1日付のカジノ関連税制の大幅な改定により、国内のカジノ利用者およびカジノ事業者の双方に対する税負担が増大した。税率の変更点、法的根拠、新設された規制当局の役割、および詳細なライセンス状況を解説する。

ゲーミング税制の改定:入場料および収益課税の引き上げ
スリランカ国民を対象としたカジノ入場税(Casino Entrance Levy: CEL)は、ゲーミング事業者が利用者から直接徴収する義務を負う。支払いは100米ドル、またはその他の両替可能な外貨、もしくは適用為替レートに基づくスリランカ・ルピーで行われる。※外国人には入場税は課されない。
事業者のゲーミング収益に対する課税である総徴収額税(Gross Collection Levy: GCL)も改定された。ゲーミング事業の月間総収入(Gross Collection:GGRに相当)が100万ルピー(約3,228米ドル)を超えるすべての事業者に対し、課税率は従来の15%から18%へと引き上げられている。この「総徴収額」とは、顧客の賭け金総額から払戻金を差し引いたゲーミング収益のみを指し、飲食や宿泊による売上は対象外となる。
今回の税制改正は、2025年12月に承認された「2025年ベッティングおよびゲーミング課税(改正)法(第25号)」に基づいている。これにより、1988年制定の旧法(第40号)が更新された。※1、※2

ギャンブル規制当局(GRA)設立
政府は、これまで断片化されていた規制枠組みを一本化するため、国内初となる独立規制機関「スリランカ・ギャンブル規制当局(Gambling Regulatory Authority: GRA)」の設立を昨年決定した。その、背景には、マネーロンダリング対策(AML/CFT)の不備解消や、未規制のオンラインギャンブルからの税収捕捉という目的がある。
「2025年ギャンブル規制当局法(第17号: Gambling Regulatory Authority Act, No. 17 of 2025)」に基づき、GRAは2025年12月1日に法的に運用を開始しており、2026年6月30日までに組織体制の完全構築と実務運用への移行を完了させる予定だ。
GRAはカジノ、統合型リゾート(IR)、ベッティングショップ、オンラインギャンブル、さらに港湾都市(ポートシティ)内のゲーミング事業など、あらゆるギャンブル活動のライセンス発行、監視、および徴税を一括して担う。市場予測によれば、スリランカのゲーミング市場は2020年の2億4,000万ドルから、2026年には4億1,000万ドル規模に成長すると見込まれている。

カジノ事業者の監督体制とライセンス付与状況
GRAが完全に稼働するまでの移行期間において、監督権限は財務省および歳入庁(IRD)が保持している。ライセンス発行の最終決定権は2010年カジノ・ビジネス規制法に基づき財務大臣が持ち、歳入庁が事業登録と徴税実務を担当する。
スリランカ国内では昨年、14年ぶりに発行されたライセンスを得た2つのカジノ、「シティ・オブ・ドリームス・スリランカ」と「マジェスティック・プライド・カジノ・スリランカ」が開業した。これらを合わせて計8軒が営業しており、そのすべてが国際最大の都市・コロンボにある。
新規に開業した2つのカジノは下記。
シティ・オブ・ドリームス・スリランカ (City of Dreams Sri Lanka)
- 概要: スリランカ最大の地元上場企業グループであるジョン・キールズ・ホールディングス (John Keells Holdings: JKH) が開発する大規模複合施設「シナモンライフ(Cinnamon Life)」内に、メルコリゾーツ&エンターテインメント(香港)が1億2,500万米ドル以上を投じて統合型リゾートを整備。メルコはマカオで「シティ・オブ・ドリームス」「スタジオ・シティ」などのIRを運営する大手カジノ事業者。フィリピン、キプロスでもIR事業を展開している。
- 運営構造: メルコ(香港)の100%子会社が2024年4月1日から20年間のカジノライセンスを保有し、上層5フロアを同社の超高級ブランドホテル「ヌーワ(Nüwa)」、ショッピングモール、カジノを含む「シティ・オブ・ドリームス・スリランカ」として運営する。2025年8月1日に開業。
マジェスティック・プライド・カジノ・スリランカ (Majestic Pride Casino Sri Lanka)
- 概要: 地元企業のゴールデン・アイランド・ホスピタリティ (Golden Island Hospitality) と、インドのマジェスティック・グループ (Majestic Group Hotels & Casinos) の合弁プロジェクト。ゴールデン・アイランド・ホスピタリティは、スリランカ国内(キャンディ、ヌワラエリヤ等)で5つ星ホテルやヴィラ、レストランを運営する中堅ホスピタリティ企業。観光・宿泊業に強い基盤を持つ。マジェスティック・グループ(会長:Ashok Khetrapal)は、インド・ゴア州で15年以上の実績を持つ業界大手。ゴア最大のオフショア(船上)カジノ「Majestic Pride」を運営し、カジノと高級ホテルの統合運営に豊富な経験を持つ。
- 運営構造:ゴールデン・アイランド・ホスピタリティが2024年7月にライセンスを取得し、コロンボのランドマークであるロータスタワー内に2025年4月に開業した。カジノ事業のノウハウを持つマジェスティック・グループが戦略パートナーとして運営を担っている。

以下の事業者は、長年コロンボで営業を続けている既存カジノだ。
- バリーズ・コロンボ (Bally’s Colombo)
- ベラージオ・コロンボ (Bellagio Colombo)
- カジノ・マリーナ・コロンボ (Casino Marina Colombo)
- スターダスト・クラブ (Stardust Club)
- コンチネンタル・クラブ (Continental Club)
- ザ・リッツ・クラブ (The Ritz Club)
(note 1)
原文 (IRD Notice on CEL Collection):
“Every person who carries on the business of gaming in Sri Lanka shall collect CEL of United States Dollars one hundred… from Sri Lankan Citizen who enters into such place.”
邦訳: 「スリランカ国内でゲーミング事業を行うすべての者は、当該事業所に入場するスリランカ国民から100米ドルのカジノ入場税(CEL)を徴収しなければならない。」
(note 2)
原文 (Betting and Gaming Levy Act, No. 25 of 2025):
“for any year commencing on or after January 1, 2026, at the rate of eighteen per centum;”
邦訳: 「2026年1月1日以降に開始する各年において、(総収入に対する)税率は18%とする。」
text by Tanaka Tsuyoshi