マカオ特別行政区の博彩監察協調局(DICJ)が発表した2025年通期統計によると、マカオのカジノ産業における総収益(GGR)は、前年比9.1%増の2,474億パタカ(約4.8兆円)に達した。これはコロナ禍前の2019年比で約84.6%の回復水準。主要因は、同年のインバウンド旅客数が4,000万人(中国本土からの旅行者が中心)を超え、過去最多を更新した点だ。中国経済の減速懸念はあるものの、一般旅客の圧倒的な集客数が市場を牽引している。

「売上」から「利益」への構造転換

現在のマカオ市場において、経営指標として重視すべきはGGRの額面よりも「利益」である。かつて市場の半分を占めたジャンケット経由のVIP部門収益は27.5%まで低下した。これにより、運営会社がジャンケットへ支払っていた多額のコミッション(手数料)が大幅に削減された。

MGMチャイナやサンズ・チャイナ、ギャラクシー・エンターテインメント、メルコリゾーツ&エンターテインメントといった主要事業者の業績を見ると、マス・マーケット(一般客)主導のビジネスモデルへの移行により、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)率は2019年を上回る水準で推移している。いわば「薄利多売のVIP依存」から「高利益率の一般客主体」へと、経営体質が極めて筋肉質に変貌を遂げたといえる。

Macau, China - April 10, 2024: Vibrant night lights illuminate Macau Island's famous casino skyline over bustling streets

ジャンケットの影響力排除と「ポンテ16」の終焉

この構造変化の背景には、2022年に施行された改正ゲーミング法(第16/2022号法律)がある。新法では、ジャンケットがライセンス保有企業(コンセッション事業者)と利益を分配(レベニューシェア)することが厳格に禁止され、不透明な資金洗浄の温床となっていた独自のVIPルーム運営も刑事罰の対象となった。

この法改正の波に抗えなかったのが、かつての「衛星カジノ(サテライトカジノ)」で、管理会社(Management Company)は、ライセンス保有企業からカジノ収益の一定割合を受け取ることが禁止された。また、“カジノ施設はライセンス保有企業(=コンセッション事業者)の所有物件内でなければならない” と規定された。

たとえば「ポンテ16」(運営企業:サクセス・ユニバース・グループ / 実徳環球)の場合、ライセンス保有者であるSJM側が買収(直営化)を断念したことで、2025年11月をもってカジノエリアの営業を終了した(ホテル「ソフィテル・マカオ・アット・ポンテ16」の営業は継続されている)。中間業者が介在するカジノ運営モデルは事実上、消滅した。