北海道は、令和8年度当初予算案において「統合型リゾート(IR)に関する調査・政策検討費」として998万円を計上した。2019年に環境への配慮を理由に誘致断念を表明して以来、事実上の凍結状態にあった北海道のIR計画が、約6年の歳月を経てついに動き出した。
今回、候補地である苫小牧市も歩調を合わせてIR検討のために500万円の予算を計上したと報じられている。国が2027年5月から11月にかけて実施する「第2期公募(区域整備計画の申請)」への参戦を視野に入れた、「再始動宣言」と言える。鈴木直道知事は1月の会見でも「北海道型IRコンセプト」の再構築を明言していた。
道は、国土交通省がこれまでにおこなってきた意向調査でも「検討」の意向を示していたと伝えられており、海外のカジノオペレーターも期待を寄せてきた。米国の巨大資本ハードロック・インターナショナル(ハードロック・ジャパン)はかつて、ギター型ホテルや1万人収容のライブ会場、さらにはアイヌ文化との共生を掲げた「5,000億円規模」の投資構想を表明していた。2019年の断念後も苫小牧市に事務所を維持し続け、日本でのライセンス取得に引き続きコミットする姿勢を見せていた。また、韓国・仁川で「インスパイア」を成功させたモヒガン(Mohegan)も、北海道を「アジアの最優先候補地」として再ロックオンしている。
あくまでも「意向の表明」
しかし、道の「998万円」という予算額はあまりに少なすぎる。先行する大阪やかつての横浜では、事業者公募(RFP)の実務やアドバイザリー費用に年間数億円規模が投じられてきた。対して現在の北海道の予算には、公募に不可欠な専門コンサル費用や本格的な環境アセスメント費用が含まれていない。
2月13日の記者会見で鈴木知事は、「道としては『IRに関する基本的な考え方』改訂事業費ということで新年度に予算を計上」という表現で説明した。
つまり、今の北海道は「リングに上がる意思」は示しながら、足を踏み出すかどうかを検討する、という段階だ。国への申請期限である2027年11月5日から逆算すれば、残された時間は極めて短い。本格的な公募準備に入るためには、2026年度後半の補正予算、あるいは2027年度当初予算での「数億円規模」の積み増しが不可欠となる。この追加予算が動く瞬間こそが、「リングに上がった」と言えるだろう。
パチンコ業界が最も警戒すべきは、2030年代初頭に起こる「人材争奪戦」である。IRが創出する1万人規模の雇用は、地元のみならず広域から人材を集めることになる。つまり、大阪、北海道のみならず全国でサービス業従事者の流出が起こる。IR内のカジノが求める「接客要員」「ゲームプロテクション要員」として、パチンコホール勤務経験者は活躍が期待されるので、全国のパチンコホールが影響を受けることは明白だ。
text by Tanaka Tsuyoshi