B-1/B-2観光ビザまたはESTAで入国している場合:
米国での就労や米国からの収入を得ることは禁止されています。
プロのポーカープレイや、現金賞金付きのトーナメントへの参加は、報酬を得るための活動に積極的に参加していることから、就労とみなされます。
If you are on a B-1/B-2 tourist visa or ESTA:
You’re not allowed to engage in employment or earn income from U.S. sources.
Professional poker – or even playing in tournaments with cash prizes – is treated as work because you’re actively participating in an activity for compensation.

アメリカで開催されるポーカートーナメントに参加しようとするポーカープレイヤーに注意を促す文書の波紋が広がっている。
米国ではWSPOのような大規模な国際大会が開催されており、近年は日本からの参戦者も増えている。先の警告文が意味するのは、B-1/B-2ビザ(短期商用・観光ビザ)またはESTA(ビザ免除プログラム)で入国しようとした場合、入国を拒否される可能性があるということだ。
トーナメント参加は「就労」とみなされる
この問題の背景になっているのは、米国移民法における「就労(employment)」の定義が非常に広範に解釈されていること。基本的には、賞金(cash prizes)は報酬(compensation)と見なされるので、「米国内で、何らかの報酬を得るための活動に従事すること」はすべて就労と見なされる。たとえ本人が「自分はアマチュアだ」と主張したとしても、賞金が出るトーナメントへの参加行為そのものが「報酬を得るための活動」に該当するという解釈は、移民法の制定当初から変わっていない。
日本国内のポーカートーナメントのスキームは、「大会主催者と選手契約して海外の大会に出場」というものがあるが、入国の主目的がトーナメント参加であることは明らかであることからも、米国においては就労目的の入国と見なされる可能性は高いと考えられる。

米国政府機関の公式サイト上に、「ポーカートーナメントへの参加は就労である」と明確に記載があるわけではない。ただし、B-1(商用)/B-2(観光)ビザで許可される活動リスト(米国国務省のページ)の中には、「賞金を得るための競技への参加」は記載されていない。おそらく現在も、外国人ポーカープレイヤーの多くは、「トーナメントへの参加はTourismに該当する」と解釈しているだろうが、上記の通り、移民法では就労と見なされるわけだ。
近年、入国審査が厳格化
なぜ最近になってポーカーコミュニティで問題として注目されるようになったのか。それは、「実際はこれまで法律の運用は厳しくなかったが、近年は、入国審査の厳格化と入国者の急増」という現実があるからだ。
2001年の同時多発テロ以降、米国の入国審査は全体的に厳格化されはじめた。ポーカーブームとトーナメントの国際化で、米国内の大会に参加する海外のプレイヤーが爆発的に増加し始めたのもこの頃から。その頃から、賞金目的の活動が「就労」と見なされるケースは少数ながらあったと言われている。
近年になり、ポーカー人気の高まりで多くの外国人が優勝・入賞していることが周知の事実になった。また、過去に米国入国を拒否されたプレイヤーの体験談が、SNSやポーカー専門メディアを通じて広く共有されるようになった。2023年には、著名なプロプレイヤーがWSOP(ワールドシリーズオブポーカー)参加のためにESTAビザで入国しようとしトラブルになった事例を、世界最大級のポーカーニュースサイトである「PokerNews」や「Card Player」が報じた。

入国拒否事例:ベルギーの有名プロ、ケニー・ハラール氏(2023年)
WSOPのメインイベントでファイナリストになった経験もあるベルギーの有名プロ、ケニー・ハラール(Kenny Hallaert)氏が、2023年にESTAで米国に入国しようとした際、CBPの審査官から長時間の尋問を受け、最終的に入国を拒否された。彼はその経験をSNSで詳細に語り、「CBPは、ポーカープレイヤーがESTAで入国することを『ビザ詐欺』と見なしている」と警告した。この一件は、多くのポーカーメディアで報じられ、コミュニティに衝撃を与えた。
移民法専門弁護士による警告
ポーカープレイヤーを専門とする米国の移民法弁護士は、ウェブサイトやインタビューで一貫して、「ESTAや観光ビザでトーナメントに参加するのは極めてリスクが高い」と警告している。彼らは、CBPがソーシャルメディアや過去の賞金獲得履歴などを調査し、入国希望者が「プロのギャンブラー」であるかどうかを判断するケースが増えていると指摘している。
米国の移民法弁護士は、プロのポーカープレイヤーが合法的に米国のトーナメントに参加するためには、P-1ビザ(Internationally Recognized Athlete – 国際的に認知されたスポーツ選手向けのビザ)を取得するのが正式なルートだと説明している。