メキシコシティはアメリカとの国境からおよそ1000キロ離れた、メキシコの中央部にある首都。この街の中心部には複数のカジノがある。たとえば高級住宅地であるブランドショップが並ぶ商業エリアでもあるポランコ地区。このエリアにある比較的高めの価格帯のショップが入るショッピングモール「アンタラ」の一角にもカジノがある。そこにはラスベガスやマカオ、シンガポールのカジノのような天井の高さと豪華さはないものの、EGM(ビデオスロットマシンなどの電子式ゲーミング機)がぎっしりと並んでいる。パチンコ・パチスロとは比較にならないほど大きな画面を持つきらびやかな筐体、電子音、熱心にリールを見つめる人々。

「おなじみの光景だな」と思ったが、メキシコで人気があるらしいエレクトリックビンゴ機に着席したとき、違和感に直面した。現金投入口がふさがれているのだ。これは興味深い。どうやって遊ぶのだろうか。

ラスベガス、マカオ、シンガポールをはじめさまざまな国のカジノを訪れたが、EGMを遊ぶ手順は極めてシンプルだ。財布から紙幣を取り出し、マシンのビルバリデータ(紙幣識別機)に直接投入すればよい。勝利金(ゲームクレジット残高)は「TITO(Ticket-In, Ticket-Out)」と呼ばれるバーコード付きチケットとして排出され、それを精算機(Kiosk)に通せば、現金が払い出される。

ところがメキシコでは、フロアに並ぶ数百台のマシンの紙幣投入口は、物理的に塞がれている。フロア内に精算機も見当たらない。では、どうするのかというと、プレイヤーはまず、会員カード(プレイヤーズカード)を作らなければならない。

会員カードを作ってくれる受付は、たいてい入口近くにあり、ここで身分証明証を提示し数分待つ。会員カードを持って、ケージ(メキシコでは「Caja(カハ)」と呼ばれる)に行き、現金を渡し希望額をチャージしてもらう。精算時はケージで会員カードを提示して現金を受け取る。

エレクトリックビンゴ機にチャージ済みの会員カードを挿入すると、マシンはゲストを認識し保有クレジットが有効になりプレイが可能となる。会員カード投入口のすぐ上にある小さなディスプレイに表示された自分の名前とクレジット残高を見ると、ゲーム開始前なのにわずかに残高が減っている。つまり、キャッシャーでチャージした時点で手数料を課されているわけだ。そしてクレジットがなくなれば再びチャージしなければならない。