アメリカン・ゲーミング・アソシエーション(AGA)が発表した最新データは、米国のコマーシャルカジノ市場の根幹であるスロットマシンやテーブルゲームといった「伝統的カジノ種目」が、その巨大な規模にもかかわらず堅調であることを示している。

2024年通年の全米におけるコマーシャルゲーミング総収益(GGR)は665億2,000万ドル(約10兆6,432億円、前年比10.0%増)に達し、記録的な活況を呈した。この成長には、スポーツベッティング(前年比27.8%増)やiGaming(同44.4%増)といったオンライン分野の驚異的な伸びが大きく寄与している。

しかし、総GGRの実に74%以上を占める伝統的カジノ種目のGGRは、493億6,000万ドル(前年比3.0%増)という圧倒的な収益を上げた。内訳を見ると、収益の柱であるスロットマシンが355億1,000万ドル(同3.8%増)、テーブルゲームが103億1,000万ドル(同3.5%増)と、いずれも堅調。

この力強い基盤の上に、新たな成長エンジンが加わっているのが、現在の米国市場の姿である。2025年第1四半期(1月〜3月)のGGRは176億7,000万ドルと、四半期ベースで過去最高を記録した。伝統的カジノ部門は前年同期比でわずか0.3%減とほぼ横ばいながらも高水準を維持し、iGaming(同18.5%増)が全体の成長を牽引した。

AGAのプレジデント兼CEO、ビル・ミラー氏が語るように、市場は「消費者の需要に応える革新」によって成長している。米国の事例は、日本の遊技業界に対し、デジタル化への対応という課題だけでなく、ビジネスの根幹であるリアル店舗の魅力を維持・向上させることが、市場全体の持続的成長に不可欠であることを示唆していると言えるだろう。

(note)
GGR (Gross Gaming Revenue):グロス・ゲーミング・レベニューの略。カジノやスポーツベッティングといったゲーミング事業者の総売上(顧客の総賭け金)から、顧客への勝ち分(払い戻し金)を差し引いた金額を指す。日本のパチンコ産業における「粗利」とほぼ同義の概念である。