観光庁は12月17日、特定複合観光施設区域整備法(以下、IR整備法)に基づく「区域整備計画」の新たな申請期間を定める政令案について、パブリックコメントの実施を発表した。これは、現在1カ所(大阪)のみに留まっているIR認定区域を、法律上の上限である「3カ所」まで拡大させるための具体的な手続き再開を意味する。
発表の概要と背景
現行の政令では、申請期間は「令和3年10月1日から令和4年4月28日まで」と規定されており、すでに終了している。今回の改正案では、これに「令和9年5月6日から同年11月5日まで」という新たな半年間の期間を追加する。
2023年4月に「大阪・夢洲地区」が国内第1号として認定されたが、残る2つの枠については次回の申請時期は不透明な状態が続いていた。国土交通省による自治体への意向調査を経て、今回、約1年半後となる2027年(令和9年)5月を申請受付開始時期に設定する方針を示した。この背景には、以下の意図があると考えられる。
- 自治体の再準備期間の確保:既存の候補地や検討を再開する自治体が、改めて事業者選定や住民合意形成を行うためのリードタイム。
- 市場環境の見極め:世界的なインフレや建設コストの高騰が落ち着き、国際的なカジノオペレーターが投資判断を再検討できるタイミングの提示。
2022年申請時における3自治体の動向と結末
2022年4月の初回申請期限に向け、計画を準備していた主要3自治体の状況を整理する。このときに、認定を受けたのは大阪府・市(事業者はMGMインターナショナルとオリックスを中核企業とする大阪IR株式会社。2025年5月にMGM大阪株式会社に社名変更)のみであり、長崎は不認定、和歌山は申請断念という結果に終わっている。
大阪府・市(夢洲地区)
- 主要事業者:MGMインターナショナル、オリックス
- 結果:認定
- 現状:2023年4月に政府より認定。現在、国内唯一の認定区域として2030年秋の開業に向け着工済み。
長崎県(ハウステンボス)
- 主要事業者:カジノオーストリア
- 結果:不認定
- 詳細:2023年12月に政府が不認定を通知。審査委員会は「資金調達計画の確実性」や「事業継続性」に重大な疑義を呈した。特に、大手金融機関からの融資確約が不透明だった点が致命傷となった。
和歌山県(マリーナシティ)
- 主要事業者:クレアベスト・グループ
- 結果:申請断念
- 詳細:2022年4月の期限直前、県議会が区域整備計画案を否決。事業者の資金調達計画の具体性不足や、公的資金投入への懸念が議会で噴出し、国への申請に至らなかった。
今後の注目点
今回の政令改正により、これまで「様子見」を続けてきた自治体(北海道、千葉県、東京都など)が再び検討の舞台に上がるか、また、長崎県が再挑戦するどうかが焦点となる。
おそらく自治体が注視しているのは、大阪IRの建設進捗と、それに伴う経済波及効果の再試算だろう。2027年の申請開始までに、どの自治体が強力な海外パートナーを確保し、かつ、前回「不認定」となった長崎県を上回る資金調達計画を提示できるかが、残り2枠の行方を左右することになるだろう。