マカオ特別行政区の博彩監察協調局(DICJ)が発表した2025年通期統計によると、マカオのカジノ産業における総収益(GGR)は、前年比9.1%増の2,474億パタカ(約4.8兆円)に達した。これは2019年比で約84.6%の回復水準である。インバウンド旅客数は4,000万人(中国本土客が中心)を超え過去最多を更新したが、その裏側で、主要事業者の「利益の質」には大きな変化が生じている。

「薄利多売」モデルへの変質と利益率の停滞

かつて市場を支えたジャンケット経由のVIP部門収益は27.5%まで縮小し、運営会社が支払う多額のコミッションは消失した。しかし、理論上の利益率改善を打ち消しているのが、自社集客コストの激増である。

主要IR事業者の2025年通期(または直近12ヶ月)のAdjusted EBITDAを見ると、MGMチャイナ(2019年比161.8%)を除き、サンズ(同69.3%)、ギャラクシー(同81.3%)などは2019年水準に届いていない。

最大の要因は、ジャンケットに依存せず自ら顧客を奪い合う「プレミアム・マス」層へのシフトだ。リベート(現金返還)やコンプ(無料宿泊・飲食)といった販促費率は、2019年の約15%から2025年には20%超へと上昇。さらにディーラーの人件費も10〜15%増となるなど、「高コスト・多客」の薄利多売モデルへの移行が鮮明となっている。

Macau, China - April 10, 2024: Vibrant night lights illuminate Macau Island's famous casino skyline over bustling streets

「非ゲーミング」投資という重い義務も

2023年からの新ライセンス条件に伴い、6社合計で1,188億パタカ(約2.1兆円)の非ゲーミング投資(MICE、文化、スポーツ等)が義務付けられたことも、利益を圧迫している。カジノ部門で稼いだ利益を、回収期間が長く利益率の低い非ゲーミング部門へ補填する構造が定着したため、各社のEBITDAマージン(利益率)は2019年比で数ポイント低下。サンズでは35.9%から32.4%へ、ギャラクシーでは31.7%から28.5%へと、それぞれ低下している。ただし、このマージン率はかつての「異常」とも言える数値と比較して低下したのであり、他産業と比較すれば非常に高く「優良企業」と言えるものだ。

構造変化の象徴「ポンテ16」の幕引き

この収益構造の変化を決定づけたのが、2022年施行の改正ゲーミング法(第16/2022号法律)だ。新法はジャンケットとのレベニューシェアを厳格に禁止し、さらに「カジノ施設はライセンス保有企業(コンセッション事業者)の所有物件内でなければならない」と規定した。これにより「衛星カジノ(サテライトカジノ)」は営業を終了していき、2021年12月末時点に42軒あったカジノ施設は、猶予期限を迎えた2025年12月末には29軒になった。

この法改正の波を象徴するのが「ポンテ16」(運営企業:サクセス・ユニバース・グループ)の事例だ。ライセンス保有者であるSJM側が、テライト店舗の買収(直営化)を断念したことで、同施設内のカジノは2025年11月をもって営業を終了。中間業者が介在するカジノ運営モデルは事実上、消滅した。