国土交通省(観光庁)は10月9日、特定複合観光施設区域整備法第37条第1項に基づき、2025年度における「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」の実施状況に関する評価結果を公表した。

今回の評価において最も注目すべき事実は、大阪市の人工島・夢洲に開業予定のIR(カジノを含む統合型リゾート)について、カジノ施設およびIR全体の詳細設計が完了し、すでに実際の建設工事に着手していることが確認された点である。あわせて、中核株主による出資の実行、地盤沈下対策や液状化対策工事、土壌汚染対策工事の実施など、国が求める基準を充足して着実に前進していると評価された。なお、評価時点で着手された ”建設工事” は基礎・杭工事や土工等の地下躯体関連が中心であり、地上建屋(上屋)が組み上がる本格的な躯体立ち上げ段階ではない。

国内初の統合型リゾート(IR)整備をめぐっては、土壌対策や資材高騰、スケジュールの調整など様々な議論や環境変化が続いてきた。しかし、この評価書から、許認可手続きやインフラ整備、資本の払い込みが予定通り完了し、ハードの建設フェーズへ移行したことがわかる。

一方で、国交省が示した「認定条件」に対する評価においては、今後の事業運営に直結する重要な要望が盛り込まれた。それが「需要予測の精緻化」である。

評価書では、現時点での推計値について「前提条件に変更がないことの確認に留まっている」と現状を整理した上で、推計に用いる各種データの精緻化と、目標実現に向けた具体的な取り組みを進める意向を確認したとしている。その上で国は、全体の需要動向だけでなく、ビジネス客など個別ターゲット層の動向を前提条件へ適切に反映させること、ならびに社会情勢を踏まえた市場環境の変化を適時反映させる必要性や、外国人来訪客を呼び込むためのプロモーションの具体化を改めて留意事項として求めた。

大阪IRの事業計画は、年間総売上目標約5,200億円のうち、約8割にあたる4,200億円をカジノ収益が見込んでいる。また、年間約2,000万人を見込む来訪者数のうち、約3割にあたる600万人が外国人客という前提だ。

初期の事業計画に掲げた数字を形式的に固定化させず、足元の市場環境や顧客属性に即した現実的な事業計画へと更新していく姿勢が、年次評価という定点観測の場を通じて監督官庁から改めて念押しされた形だ。

大阪IRを開発・運営するMGM大阪株式会社の中核株主は日本MGMリゾーツとオリックスでがそれぞれ約41%を出資する。中核企業である日本MGMリゾーツの親会社である米国カジノ大手の側からは、日本市場に対する強い自信が発信されている。

MGMリゾーツ・インターナショナル(MGM Resorts International)のビル・ホーンバックル(William Hornbuckle)CEOは、今年7月末の決算説明会において、大阪夢洲のプロジェクトについて「2030年の開業に向けて予定通り、予算通り(on time and on budget)に進んでいる」と強調した。ホーンバックル氏は、日本市場のポテンシャルと長期的な投資回収に対して揺るぎない確信を示し、「当社の将来はこれ以上なく明るい」と語っている。同社CFOのジョナサン・ハルクヤード(Jonathan Halkyard)氏も、あらかじめ確保した円建て融資枠などを通じて手元資金の手当てが順調に進んでいることを説明している。

ハードの建設が本格化し、外枠が立ち上がりつつある大阪IR。巨額の資本を投じる海外事業者の強気な成長シナリオと、市場実態に即した精緻な計画運用を求める国の監視の目。2030年の開業に向け、大阪・夢洲のプロジェクトは「数字の現実味」を検証する新たな局面に入っている。