フィリピンのゲーミング規制・運営機関であるフィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)は2026年10月21日、ギャンブル問題の相談窓口「国家問題ギャンブルヘルプライン(NPGH)」のアクセス経路をデジタルプラットフォームへ拡大したと発表した。従来の24時間電話窓口に加え、電子メール、主要SNS(Facebook、Instagram、TikTok)、およびメッセージングアプリ(Viber、WhatsApp)を通じたテキストでの相談受付を開始した。

フィリピンにおける問題ギャンブル対策は、これまで公的窓口が全く存在しなかったわけではない。従来はPAGCOR内の担当部署(責任あるゲーミング部門)の窓口や、提携する民間の精神科クリニック・リハビリ施設が個別に案内されていた。しかし、対応時間が日中中心に制限されていたほか、連絡先が分散しており、利用者が緊急時や深夜に迅速な支援へアクセスするには限界があった。

こうした制約を解消するため、PAGCORは依存対策の実績を持つ専門NPO「Seagulls Flock Organization(SFO)」と提携。ウェブサイト構築や専任相談員の専門研修といった準備期間を経て、2026年5月26日にフィリピン初となる24時間365日稼働の専用窓口「NPGH」を公社本社内に正式開設した。認知行動療法や動機付け面接の研修を受けた専門スタッフを3交代制で配置し、初動相談から適切な医療・回復機関への紹介(トリアージ)を一元的に担う体制を確立した。

今回のデジタル導線の拡大は、5月の正式稼働からわずか5か月で実施された。背景には、同国で急速に普及する電子ゲーミングやオンラインカジノの利用動向がある。特に日常のコミュニケーションをスマートフォン上のメッセージアプリに依存する層にとって、通話(肉声での相談)は心理的抵抗感が強い。ViberやWhatsAppといった生活インフラをそのまま相談窓口に充てることで、心理的ハードルを下げ、問題の早期段階での介入を狙う。

公社が単独で窓口を抱え込むのではなく、臨床知見を持つ外部専門団体に実務を委ね、公社側が制度・リソースを提供する。この官民協働の枠組みが、常時稼働体制の確立から短期間でのデジタル全面開放という機動的なセーフティネット整備を支えている。