『NUSTAR Resort and Casino』(NUSTAR/ヌースター)は、セブ・マクタン空港から車で約35分。カジノ、ホテル、リテール、ダイニング、コンベンションセンターを包含する延床面積約30万平方メートルの統合型リゾート(IR)で、2027年の完全開業に向けて現在も拡張工事を継続している。

写真提供=NUSTAR Resort and Casino

カジノフロアは吹き抜けの2層構造で、エレベーターを上がった2階部分はVIPルーム。1階のマスフロアは最大250台のテーブルゲームと最大1,500台のゲーミングマシンを設置可能な広々とした空間。この規模はメトロマニラにあるIRを除けば国内最大規模。これがどのくらいの広さかをパチンコホールを例にして説明すると、約6,000~7,000台のパチンコ・パチスロを設置できる広さだ。もちろん、中央通路や島通路を含めてだ。

韓国、カンボジア、ベトナムでは原則として自国民のカジノでのプレイを禁止しているが、フィリピンでは自国民のプレイは原則自由。それゆえゲストのほとんどはフィリピン人。そしてカジノ入口で身分証のチェックがない。これがおおらかな雰囲気をもたらしているように思う。

外国人客の中では韓国人が7割以上を占めているそうで、中国人客はごく少数。ホテルのチェックインの間に作ってもらったプレイヤーズカードを持ってフロアを眺めて回ると、中国圏で人気の「大小」のテーブルが2台しかなかった。中国人マス客が少ないことがその一因だろう。そもそも、メトロ・セブを訪問する外国人観光客の大多数が韓国人で、中国人の割合は10%以下。カジノフロア内の、メイン入口からもっとも奥の位置にはバンド演奏などのライブパフォーマンス用のステージと客席があり、このエリアでフィリピンで人気のライブ・ビンゴ(Traditional Bingo Games)が開催される。ビンゴ開催時には臨時にテーブルと椅子が増設され、ざっと数えたところ120席程度。その7割程度が埋まっていた。実にフィリピンらしい光景だ。

写真提供=NUSTAR Resort and Casino

ミニマムベットは、「バカラ」が2,000ペソ(約5,172円 )、「ブラックジャック」が1,000ペソ、「大小」が100ペソ、「ルーレット」が50ペソだった。もちろん、ETGsならもっと手ごろなレートで遊ぶことができる。 アジア圏でおなじみのARUZEの「大小」が1台だけあったので、プレイヤーズカードを挿し込んでフリープレイ(プロモーショナル・クレジット)で運試しをした。外貨両替はケージでもできるが、レートを気にするならカジノの外(地下)の両替店に行くことをお勧めする。

筆者が訪問した日には、カジノフロアでポーカー・トーナメントとブラックジャック・トーナメントが開催されていた。この区画ではディーラーのユニフォームがブレザーではなく、スポーティーなシャツだった。しかもディーラーたちが若い。これもカジノフロアの雰囲気を明るくカジュアルにしていた要因だろう。

実は、カジノフロア内にはまだ使われていない区画がある。フル開業したタイミングで増設するのだろう。使われていない区画(壁で覆われている)の裏側にある通路には、使われていないケージがある。これは現在稼働しているケージとちょうど対角の位置。カジノフロアがフル開業したら両方を稼働させるのだろう。

カジノへの入口は複数あるが、メインの入口は、ヌースターのメインエントランスの正面。左手が、フィリピン初の ”国産5つ星” ブランドホテル『Fili Hotel』(379室)。右手が全室スイート仕様の最上位ブランド『NUSTAR Hotel』(223室)。ホテル内にはレストランのほかスパ、フィットネス、プール、展望デッキがある。

最上位ブランド『NUSTAR Hotel』
ホテル『Fili Hotel』のフィットネスルーム
ホテル『Fili Hotel』のプール

モールは、カジノエリアをぐるりと取り巻くように配置されており、約80~100区画がある。1階には世界トップクラスのラグジュアリーブランドが軒を連ねている。これらのショップのほとんどが、「メトロマニラ以外ではフィリピン国内初出店」だ。レストランは1階のほか上層に、高級店から手ごろな価格の店やフードコートなど幅広いラインナップ。映画館、ヘアサロン、ドラッグストア、キッズ向けのゲームコーナーもある。まだ店舗が入っていない区画もあり、これも新棟の竣工に合わせてテナント誘致を進めているようだ。筆者が訪問した時には、意欲的に海外進出している有名なラーメン店(日本企業)が出店準備中だった。

The Mall at NUSTAR

セブ島は言わずと知れたビーチリゾートだが、ヌースターから車で15分の距離にはゴルフ場もある。車で3分(Grabで300円~400円)の距離にはセブ島最大規模のショッピングモールがある。空港近くで開発中の近未来型・職住近接再開発エリア「マクタン・ニュータウン」も見どころだ。そんな周辺環境を含めて考えると、NUSTARはファミリーユースにも社員旅行にも対応できるリゾートという印象だ。

ヌースターの開発、所有、運営、およびPAGCOR(政府系ギャンブル規制局)発行のゲーミング・ライセンス保持を担っているのは、ゴコンウェイ・グループの持株会社JG Summit Holdings, Inc.の子会社、Universal Hotels and Resorts, Inc.(UHRI)。これはNUSTARの開発のために2017年に設立された特別目的会社(SPV)だ。

ゴコンウェイ・グループはフィリピンの5大コングロマリット(巨大複合企業)の一つで、事業領域は、航空事業、不動産・ホテル事業、食品・飲料事業、小売事業、金融事業、インフラ・エネルギーなど広範にわたる。

フィリピン最大の格安航空会社(LCC)であるセブパシフィック航空を運営しており、国内線シェアは圧倒的トップで、国際線も幅広く運航している。ホテル部門のロビンソンズ・ホテルズ&リゾーツ(RHR)は、低価格帯および中価格帯の自社ブランドホテルのほか、外資系高級ホテルなど30施設・5000室以上のホテルを運営する国内最大手。不動産部門は、国内第2位の施設数・総面積を誇るショッピングモール「ロビンソンズ・モール」を所有している。こういう背景があるため、ヌースターのホテルもモールも外部企業に運営委託せず、自社グループで運営している。

そして、創業者である故ジョン・ゴコンウェイ・ジュニア氏(2019年に逝去)は中国生まれではあるが、幼少期を過ごし、ビジネスのキャリアをスタートしたのはセブだった。ゴコンウェイ・グループにとってはカジノ事業こそ初挑戦だが、「創業者の故郷にグループの持つノウハウの結晶と言えるIRを開発した」という形だ。そして、セブ市にゆかりのある同社だからこそ、市との合弁事業協定に基づくカジノリゾート開発締結にこぎつけることができたのだろう。

フィリピンにおいて、地方自治体と民間企業の合弁事業協定によってカジノリゾートが開発されたのは、これが初めてのケース。例えば、シンガポールのIR、マリーナベイ・サンズも政府から土地を99年間という長期リースで提供されているが、リース代は一括前払いだった。一方、ヌースターの場合、市が保有する土地のリース料はレベニューシェア方式。開発側にとっては、初期の財務負担を劇的に減らせるスキーム。セブ市にとってはヌースター開業による訪問者単価の上昇や雇用創出など経済波及効果に加えて、「ヌースターが儲かれば市も儲かる(リース料収入も増える)」ということだ。

文=田中 剛(Tanaka Tsuyoshi)