スリランカの首都コロンボ沖で進む巨大埋立開発事業「コロンボ・ポートシティ(Colombo Port City)」において、統合型リゾート(IR)用地での事業提案に向けたデューデリジェンスを進めていた申請者が撤退したことが明らかになった。スリランカ国会の公共財政委員会(COPF)において、コロンボ・ポートシティ経済委員会(CPCEC)のディレクター・ジェネラルであるレヴァン・ウィクラマスリヤ氏(Revan Wickramasuriya)が10月14日に証言した。
申請を取り下げたのは、10ヘクタールのIR指定用地への参画を検討していたUniversal Entertainment Colombo社。同区画に対して過去および現在において何社が提案に参加したのか、公募や競合の全体社数などの詳細は公表されておらず不明だ。また、同社が唯一の検討事業者であったわけではなく、他の候補者の存在も示唆されているが、具体的な企業名は明らかにされていない。

初期10計画のうち半数が離脱――11.2億ドルの投資確保も選別進む
ポートシティ開発を巡っては、初期に提案されていた10件の主要プロジェクトのうち、今回判明したIRを含めて計5件が撤退に至っている。撤退した案件には、大手医療機関アシリ・ホスピタル(Asiri Hospital)による病院プロジェクトや、ゲートウェイ(Gateway)による教育施設、複合用途開発などが含まれる。
一方で、プロジェクト全体が停止したわけではない。すでにリース契約が締結された9区画において、累計11億2,000万米ドルの一次投資が確保されている。
現地ではマリーナ地区の整備や住宅建設が進むほか、第1フェーズで5億1,500万米ドルが投じられるコロンボ国際金融センター(CIFC)の杭打ち工事が着工するなど、採算性を見極めた事業者による開発は継続している。
新興国IR開発の障壁――法制度整備の遅れと企業名に関する留意点
スリランカのゲーミング市場では、地元財閥ジョン・キールズ・ホールディングスによる総事業費約12億米ドルの複合開発プロジェクトにおいて、メルコリゾーツ&エンターテインメントの100%子会社がカジノ部門等を担う『City of Dreams Sri Lanka』が2025年8月に開業するなど、国際的な注目が集まっている。
同国では2025年12月に包括的なギャンブル規制当局法(GRA法)が施行されカジノ課税等の引き上げ(税率18%への増税や自国民入場税100ドル化)は2026年1月に施行されたものの、ギャンブル規制当局(GRA)による具体的なライセンス交付規則や実務基準の詳細設計は依然として検討段階(専門委員会でのレビュー中)にある。制度設計の不透明さが、大型投資を伴う事業者の判断に影響を与えた可能性がある。
さらに、今回のCOPF審議では、委員長を務めるハルシャ・デ・シルバ議員から、投資事業者の「実質的支配者(Beneficial Ownership)の特定」や「資金洗浄対策の厳格な審査」が適切に行われているかについて強い追及がなされた。スリランカ国会側が、巨大開発に伴う資金の透明性やコンプライアンスを強く警戒している姿勢が浮き彫りとなっている。
なお、今回国会証言で名が挙がった「Universal Entertainment Colombo」について、現時点で親会社や出資元の実態、スリランカ現地での事業実態があるのかどうかは公的記録上確認されておらず不明だ。日本の遊技機大手である株式会社ユニバーサルエンターテインメントの公式IR資料や適時開示にも該当する記載はなく、同社との資本関係や直接的な関与の有無についても明らかになっていない。
text by Tanaka Tsuyoshi